Story of Tax Examination 税務調査物語 在庫編

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棚卸はやっぱり重要です。

vol.21

棚卸に立ち合いをすると、会社の皆さんが真剣に在庫の数量を数えている姿を見ます。1日かけて真剣に数えている姿です。まる一日業務が中断します。それでも棚卸は会社の利益を確定させるために大切な業務なのです。
 この時、必ず数えにくいものが出てきます。どうしましょうと会社の方が戸惑う場面が必ずあります。昔からそこにある売れ残り商品、返品されてそのままの商品、流行遅れの季節商品、部品取りに使っている商品、販促用の商品、壊れた商品などとにかくさまざまなものがあります。原則を言います。とにかくこれらの商品を他の商品と同様に数えておきましょう。全部出してしまいましょう。そしてそのあと評価損を計上できるものかどうかの確認をしましょう。売れないものは決算前に確実に廃棄処分してしまいましょう。
 最初から棚卸表にこれらの商品を「もう価値がないから」と未計上にしておくと、後で税務調査の時に、「この商品は計上されていますか?」との一言で在庫計上漏れの論争になってしまいます。私ども会計事務所も計上されていないものはわかりません。税務調査の連絡が来た後に会社の方に言われることが多いのです。「××は在庫表にのせていないんですけど、こんなものはのせなくてもいいですよね?」と後で言われます。そのときに言われても、いいですよと言いきれない時だってありますよ。
 社長さん、在庫を把握するのは経営にとってとても重要です。在庫を拾い出し内容を精査できるのはこの時です。そして、決算の正確性を期すためにも時間をかけて把握しましょう。優良企業ほど真剣に在庫を把握しているのですから。

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毎日の業務の流れをフローチャートで整理してみませんか。

vol.20

 「注文はどうやってうけるのですか?」「電話ですか?ファックスですか、それともメールですか?」と調査官に必ず聞かれます。売上げを調査するにあたって、毎日の商品の受注の流れを知ることは必須です。それを知らなければ「決算日の攻防戦」はやれません。
 決算日に売上の漏れがあるかどうかは、決算日前の受注の注文書でいつまでに納品することになっているのかが記入された証拠資料が無ければ指摘できません。納品日が決算末日になっていて、売上納品書日付が決算末日翌日以降になっているものを怪しいと見るのです。
 経理担当者「ファックスです。」、調査官「そのファックス綴りは残していますか?」、経理担当者「出荷すれば不要なので捨てています。」、調査官「え!」
経理担当者「メールです」、調査官「そのメールは打ち出ししているか、保存していますか?」、経理担当者「削除しています。」、調査官「え!」
経理担当者「電話です。」、調査官「口頭だけですか?」、経理担当者「はい、間違えて出荷したらお客様から返品になります。」、調査官「え!」
 ファックスでの受注書類、メールでの受注書類、電話での注文メモは保管して置きましょう。そして経理担当の業務の流れを順番に書き記して見ましょう。業務効率を見直すためにも良い資料になりますよ。 

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外注費も在庫になります。

vol.19

 外注費支払は相手先から請求書が来れば支払います。売上がまだお金にならなくても、外注支払先は規模も小さいだろうから先にお金の支払をしてあげよう、というケースは多いと思います。売上は手形での受取でも、外注費の支払いは現金とか振り込みとかで即時払いも多いでしょう。
 決算のときはちょっとご注意ください。支払わないでくださいと言っているわけではありません。在庫計上のうえで注意しなければならないことです。
 例えばサービス業、受注した仕事を自社で行わず、外注に依頼した場合、請求書が来ればお支払いになることはあたりまえですね。しかし、決算においては売上と外注費とはペアになる原則があります。収益費用対応の原則といいますが、売上の請求が計上されていないならば、先払いした外注費は税控除できません。税控除できないということは在庫になるということなのです。決算日で区切る決算日の攻防戦です。
 目に見えないサービスの支払いが在庫になるのは皆様にはわかりにくいかもしれません。在庫?とピンとこないかもしれません。経費先行計上については決算で十分ご注意下さい。
 

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税理士事務所の仕事と税務署の仕事

vol.18

 私たち税理士事務所は税務署と仕事の範囲が違うのをご存知ですか。税理士事務所は決算を組立てます。一方税務署の調査官は決算を分解します。これが大きな違いです。お客様と税理士事務所が組立てた決算を税務署が崩します。
 税務署を定年退職する人は税理士資格を取得できますので独立開業します。今までの立場と全く反対の立場になります。実は、分解する人は組み立てることに慣れていません。家屋の解体屋さんと大工さんの違い程あります。そのため、税理士事務所には税務署からの中途退職者はほとんどいません。もっとも国家公務員ですからそんな人はなかなかいませね。
 納税申告のための資料作り、それは大変に細かい作業です。税務署のなかで調査官が1時間で確認できる決算申告書類は、税理士事務所のなかではたっぷり5日間ぐらいかかるまとめ作業が必要となります。一生懸命作成した決算申告資料を税理士事務所で電子申告すると、そのデータから税務署がコンピュータで税務調査対象をピックアップして担当統括官が各調査官に調査の指令を出すしくみとなっています。税理士事務所の現場の苦労を理解いただけるのは、社長さんというよりも経理担当者、奥様なのでしょうね。 

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やはり在庫の単価を指摘してきました。

vol.17

 在庫にいくらの値段をつけるかについて、私たち会計事務所は最終仕入原価をつけてくださいね、決算に一番近い日の仕入単価ですよ。とここまではよくお話してきました。しかし、現場のなかでこの最後の単価探しは簡単ではありません。単価を入れるために一品一品請求書で調べなければなりません。特に現在のような在庫の仕入れ単価が変動する場合はなおさらです。
 はじめは、最終の決算月分の請求書をひろげて調べます。そこに仕入れがなかったらもう一月前の請求書で調べます。さらにそこになかったらもう一月前の請求書を調べます。・・・このようにして、もし今年の仕入れがないものであったら昨年と同じ単価になります。
 皆さんが在庫をみれば、これはいつ仕入れたものかは一目瞭然でしょう。しかし、その実際の仕入れた時の単価をつけないところがマジックなのです。
 税務では在庫に金額をつけるにしても届出が必要なのです。届出をしない場合には、もっとも簡単なやり方である最終仕入原価法という方法を採用したとみなされます。あくまで決算に近い日の仕入れ単価で、仕入れたと「みなす」だけなのです。実際とは異なるのです。そこをお間違えないように。
 「めんどうだなー」といわれるゆえんはそこにありますが。知らない人が損をする、それが税法の特徴なのです。

 
 

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