Story of Tax Examination 税務調査物語 経費編

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組織図や従業員名簿はありますか?

vol.6

 社会保険の調査のように国税調査官が、「会社の組織図はありますか。」「従業員名簿はありますか。」と必ず言います。すぐに両方がでてくる会社は少ないかもしれません。「組織図は見ての通りだ。肩書のつくのは社長の私だけだ」「名簿なんかない。社会保険労務士事務所にあるだろう。」いったい、この二つで何を見たいのでしょうか。「会社の全体像をみたいのです。」といいますがはたしてそうでしょうか。
 確認です。組織図に記入されていない人に給料を払っていませんか?自宅待機組に払ってませんか。自宅待機のお嫁さん、おばあちゃん、おじいちゃん、大学へ行っている長男、嫁に行った娘など。組織図にない人への給料は、調査官にそのポイントを指摘してくださいと意思表示しているようなものです。従業員名簿のない人への給料も同じことです。
 また、組織図に書いてあるのに常勤していない人がいませんか。「組織図の長男さんはどこにいますか?」「東京です」「支社ですか?」「いえ、大学です・・・・・」昔、政治家の秘書が支援者の会社の従業員だったケースがありましたよね。
 従業員さんを調べる目的はありません。あくまで会社の親族の方々がどのようなポジションで、どのような勤務実態・給与実態があるのか。他社に比べて異常値じゃないのかを中心に調べています。
 支払がある場合には根拠の整合性をいま一度ご確認ください。理論的根拠をもつ努力をしましょう。

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第一印象は社内掲示ポスターです。

vol.7

 調査官が玄関に入るとあらゆるものに目をやります。社内掲示している貼り紙・ポスター類です。「目標達成がんばろう!」「ときめき国体・・・」「文化団体後援会」や取引先のカレンダーなどさまざまです。新鮮な目で社内をご覧ください。この会社と取引してるのか、仕事に関係のないこんなことやっているのか。仕事中心の社長なのか、仕事に関係のないことが多く、仕事以外の交際が多い社長なのか。といろいろ想像させるものがいっぱいありませんか。
 玄関から応接室までの通路に、在庫がいっぱいあれば「この在庫計上されているかなあ。」通路に自動販売機があれば、「このコインの収入は雑収入に計上されているのかな。」ちらっと鉄屑の山をみれば、「この屑収入は計上されているかなあ。」などと考えを巡らせながら歩いています。もの言うポスター・掲示物ですね。

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工場を見せてください。

vol.8

 製造業の場合、必ず「どんなふうに製品を作っておられるか、現場を見せてください。」と言って工場に入ります。整然とした工場、雑然とした工場さまざまです。綺麗さは税務調査には関係ありません。
 減価償却台帳を片手に「台帳に書いてある機械はどれですか?」と言って一つ一つ確認していく新人調査官。めぼしい機械、それも前期の決算ギリギリの期末近くに据付けた機械をピンポイントで拾いあげ、「この台帳にある新しい機械の製造番号や製造年月日はどこに刻印されていますか。」などと自分の目で、本当に決算日前に据え付けられていて、決算前に実際稼働したのかを確認しようとするベテラン調査官。「この機械は決算の後にがんばって購入しました。」という機械は今回の調査に関係ないので、「あっそうですか。」とあっけないものです。
 決算日ギリギリの購入の車両は「車検証を見せてくだい。」となります。自動車整備工場からの請求書や領収書が決算日前になっていても、車検証は動かぬ証拠です。考えてみれば当然なのですが、当然なことが作為的に歪曲されていることも、世の中にはあるのかもしれませんね。
 過去にすでに除却して、存在しないことになっている機械がそこにあり、「この機械は台帳のどこに載っているのですか。」そんなことがないようにしましょう。

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目と鼻を利かせて。 

vol.9

 工場に入ると調査官は架空人件費、架空外注費の手がかりはないか全神経を注ぎます。工程管理用のホワイトボードがあればそこに人の名前が書いてあります。ここにある人は常時活躍している人ですから架空のはずがありません。この人々ではない人の名前が給与台帳にでてくるかどうかみます。
 外注先にもっていく納品書を置いてある棚があれば、この棚にある会社名を書き記していきます。あとでこの会社名以外に外注先が出てくれば不審感を抱くわけです。
 とくに内職があるような場合は、製品の製造の流れをじっくり聞き、「どんな仕事ですか?」「一日何回運びますか?」「高齢な方ですが自分で請求書を書けるのですか?」「振り込みではなくなぜ現金なのですか?」「本当に確定申告してるのでしょうね。」と疑って聞いてきます。
 人件費も外注費も振り込みではなく、現金支払いの場合はなおのこと疑って質問してきます。まるで現金払いはあたかも不正をしているかのようにいやな質問を浴びせかけてくることもあります。会話で不愉快になった社長さんも多いと思います。
 それが彼らの宿命なのです。目と鼻を利かせて直感で調べていくというよりも、あえて人の嫌がる腹を立たせる質問により自分の職務を忠実に遂行しようとしている、それが彼らなのですから。
 

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なぜタイムカードのない人がいるのですか?

vol.10

 工場の中を廻ると玄関内側に出勤簿ないしはタイムカードがあります。出勤時退社時に必ず押していただきますね。これを調査官が見ると何をするでしょうか。調査官は人数を調べます。調査官「○〇人ですね。確かこちらの会社の確定申告書では、前期末で○×人と報告がありましたがちょっと違いますね。」、社長「もちろん役員は押していませんよ。」、調査官「それはわかっています。」、社長「変だなー全員のはずなんだけどなー。」「あっ!パートの人が入っていないかもしれない。」、調査官「なぜ押さないのですか?」、社長「辞めていく人が多いのでいちいち面倒なのですよ。」、調査官「・・・・」
 工場から出てまもなく「給与台帳3年分、社員名簿を見せてください。」と給与の調査がはじまったのは言うまでもありません。人件費の焦点を絞った調査が2時間続きました。
 タイムカード→給与台帳→給与振込依頼書又は現金出納帳→現金の場合は、そのすぐ直前に預金から現金を引き出した金額が手取り支給額と一致するかどうか→源泉所得税の納付書の記入額に一致するかどうか
 この一連の給料日の流れがピタッと合っているかどうか、是非確認ください。とても例外的な処理になっている人がいることがたまにあります。

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