Story of Tax Examination 税務調査物語 経費編

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どこまで経費になるの?

vol.11

 どこまでが経費になるのか?とくに、個人経営をされている方の経費は、法人にした場合より少し狭いかもしれません。
 税法において、そもそも法人は不合理なことをするわけがないと考えています。法人が損することはしない、無駄な経費は払わない、法人の前提として、すべて儲けにつながる行動しかとらないと考えています。そのため、法人の使うのは原則経費です。
 法人が社長や理事長のプライベートなものを支払うと経費にはなりますが、それは社長や理事長への給料になり、結果的には税控除できない内容の経費になってしまいます。経費でも税控除できる経費、税控除に制限のある経費(交際費や寄付金)そして税控除できない経費(不定期の役員給与)があるからです。
 一方、個人経営者は生活者としての消費の側面をもち、もう片方で事業者としての経費の側面をあわせもちますので、支払ったものが消費になるのか、税控除できる経費(個人は税控除できるものだけが経費です。)になるのか、どちらになるのかについてテストしなければなりません。
 そのテストのキーワードは「necessary」です。その支払が事業に直接「必要な」ものかどうかというのがテストです。「売上を稼ぐために本当に必要なものですか。」というテストに合格できて初めて経費になり税金が安くなるのです。
 これは税法の原理原則です。
 





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青色申告の落とし穴

vol.12

 税務調査官に「現金出納帳を見せてください。」といわれ、現金出納帳を見せました。そして調査官は「現金は合せていますか?」「なぜ、○月×日がマイナスになるのですか?」「マイナスはどういう意味ですか?」「今日の現金残高はいくらになっていますか?」と矢継ぎ早に質問してきました。
 事業主は「合わせていません。しかしもらったお金は漏れなくすべて記入してありますし、支払ったものもすべてつけてあります。日付も領収書とあっていますし、仕事に使ったことも間違いはありません。マイナスになるのは支払ったものだけを書いているので、お金は銀行のATMで引き出してきます。これを入金に入れていないので、1か月に1回領収書を見ながら現金出納帳の記入をします。残高として入金欄の金額から出金欄の金額をしまうとマイナスになっていしまうんです。仕方がないでしょう。」
 調査官は「これは青色申告の要件を満たしませんので青色申告を取り消ししなければなりません。」「あなたは自分自らがわざわざ届け出を出して申請したのですよ。私は帳簿書類をきちんとつけるから、青色申告の要件を認めてほしい、そのための特典としての税控除を認めてほしいと、それなのになんですか、現金管理さえできていないじゃないですか、帳簿になっていないじゃないですか。青色の特典は過去にさかのぼって取り消しです。」
 とんでもない金額の追徴を取られることになってしまうことがあります。

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青色申告破綻の連鎖

vol.13

 戦後まともに申告する人がいなかった時代に、アメとムチ政策で、帳簿を備えた人に特典を与える制度ができました。現在も同じです。この特典を与える、言葉を変えると税金を安くすることを認めるのが青色申告制度です。もし帳簿をつけなくなってしまうと、つけなくなった時までさかのぼって、特典を取り消します。結果的には過去にさかのぼって税金を取られてしまうのです。
 これは脱税ではありません。売上は漏らしていません、経費にも問題はありません。ただ単に特典がなくなるだけです。とても税法について素人の納税者にはわかりにくいかもしれません。もし3年分合計で100万円取られたとしたら、善良な納税者が100万円追徴税額を取られてしまうことを意味するのです。帳簿の記帳が不十分なためだけの問題なのです。
 現状として、青色申告の特典を利用する人は特典を一つだけ利用しているというのはごく少数です。青色申告メリットはいくつかを重ねて利用しているケースが多いのです。二つ三つ重ねて利用している場合には、あっという間に追徴税額の連鎖が起こってしまいます。もちろん税金に罰金と利息はつきものです。それを含めると大変な連鎖です。
 個人事業の方、もう一度帳簿を確認してみましょう。大変な連鎖が起こらないようにお気をつけください。



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専従者の給料が全く認められないことに!

vol.14

 家族の仕事従事者に対する給料の取り扱いは、個人事業と法人では全く違います。法人では奥さんや子供さんに給料を出すのは他の従業員さんと同じ扱いです。役員の場合は少し注意が必要ですが、原則毎月同額であれば認められます。従業員の場合も他の従業員と同様な待遇であれば全く問題ありません。
 しかし、個人事業は根本的に違います。同一生計の家族には所得税法の原則は給与という考え方が存在しません。世帯の所得を合算課税する考え方なので、世帯の中での支払を認めていないのです。
 片方で法人は認めておきながら個人はダメだというのもバランスが取れないということで、青色申告をあえて選択させて、さらに給料額をも届け出させて、そこでやっと経費にいれて税控除することを認めたのです。専従者給与という特殊な言い方で条件付きで認めているのです。
 条件に条件をつけて、それも採用するかどうかを納税者の選択に任せているのです。ということは、納税者の選択に誤りがあった場合には、すべて認めないとするわけです。
 専従者の給与を認めないといことは、この給料分だけ事業主の所得が増えることになります。所得税は高い所得の人には高い税率が適用される累進課税ですので、追徴がでてくることになります。これが一番困った問題なのです。

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世界一帳簿の精密さを要求する日本の税務当局

vol.15

 世界のほとんどの国で納税があります。私はまだ海外数カ国しか帳簿をみていませんが、帳簿が何と簡単な記入方法なのかに驚かされます。日本では平成元年に消費税法が施行され、それからは帳簿の書き方が世界一複雑になったと私は思っています。そのため実務の世界は大変です。
 仕入や経費の記入は、支払った相手先の正式な氏名名称、仕入た日付(あくまで仕入日です。帳簿に記入した日や先払や後払などでお金を支払った日とも違います)、何を買ったかの内容、金額です。具体的には NTT東日本ではなく東日本電信電話梶A21年10月分、電話料 15,329円です。これが原則です。これを一つ一つ細かく記入しないと,消費税法では帳簿が存在しないことと同じに扱われるのです。そのデメリットはいったいどこにでるのでしょう。
 消費税は売上の5%を納税するのが原則です。しかし、仕入をはじめ経費に5%税額がかかっていますから、この分をある条件のもとで、仕入や経費の税額を売上の税額から税控除します。これを仕入税額控除というのですが、ここでの注意はある条件のもとなのです。ある条件とは、先に書いた細かい帳簿の記入を事業者側(会計事務所の代行も含みます)でしなければならないこと、「および」、消費税の記入された請求書等が保存されていることです。
 帳簿に先の項目が書いていないとかまたは全く帳簿をつけていないとか、請求書をなくしてしまったらどうなるのでしょう。話は簡単です。仕入税額控除ができなくなるのです。
 たとえば売上の消費税が500万円、仕入の消費税が400万円、通常は税務署に差額の100万円をきちんと納税していたとします。税務署の調査官が「帳簿はありませんか?」納税者「はい、支払の請求書や支払った領収書は全部とってありますが帳簿は書いていません。」調査官「本当ですか?何もないのですか?」納税者「メモがありましたが捨てました。・・・・・」
 この人は追徴消費税額は400万円になるのです。結果的に二重納税もやむを得ないのです。それが現行の制度です。そうならないためにも会計事務所は記帳に神経を尖らせています。帳簿の書き方いかんで納税が変わってしまう。世界にそんな税制は他にあるのでしょうか。



 








  

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