Story of Tax Examination 税務調査物語 相続編

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子供の知らない、親の一方的な贈与工作は失敗することが多い?

vol.6

 親は子供に財産を残してやりたい。それは人情です。子供名義の預金口座をつくり少しづつ贈与をしていますよね。もちろん子供に内緒ですから、その預金口座の存在が子供に知られるはずはありません。10年、20年経ち金額が高額になったところで、残念にも親が亡くなった場合、この預金口座は誰のものでしょうか。
 相続税の申告にあたって、子供は自分の名前の預金だから親の遺産総額に入れないで、自分固有の預金という主張をします。「これは私のものです。父が作ってくれた私の財産です。私の名前なのだからすでに贈与を受けていると判断できるはずです。」これに対して調査官は「ご自分の名前の預金があることを、いつお知りになったのですか?」、長男「・・・・亡くなってからです。」、調査官「民法上の贈与が成立していないのではないですか。」、長男「民法?」、調査官「そうです民法の贈与は、あげましょうともらいましたとの贈与契約が成立していなければならないでしょう。あなたは、預金の名義があったことを知ったのは亡くなってからとおっしゃった。それでは贈与契約自体が存在していないじゃないですか。このあなた名義の預金はお父さんの遺産として申告してもらいます。」
 相続税の申告を完了し、税務署の調査があった時に初めて贈与事実を、調査官が相続人に聞くことによりにはじめて調べられることになります。それまでは贈与がうまくいっているのかどうかはわかりません。
 親がどう贈与を工作しようとも、それを調べられるのは子供なので、親の工作が無駄になることも多いのです。

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自分の預金通帳を他人が見ることが相続税調査です。

vol.7

 自分の通帳は自分しか見ません。あたり前のことです。それが相続になると違います。自分はいないのです。配偶者や子供そして私のような税理士が一緒に見ます。3年から5年さかのぼって通帳を1ページ1ページ全部見ます。全員「こんなに預金を下ろしてる、何に使ったんだろうね。」「この頃なにか使うことあったのかね。」「わからないね。・・」「税理士さん、この払いだされたお金が何に使われたのかまったくわかりません。子供や孫もらっていないし、かといって何かを買ったようでもないので不明です。」
 相続税申告も終わり後日税務調査になりました。調査官「通帳を見せてください。」「この○月×日の払いだしは何かわかりませんか。」、子供「そう言われても父の通帳のことを私たちがわかるわけがないでしょう。」、調査官「「どうしても知りたいのですが。」、子供「わかりませんよ。」、調査官「そうですか。私たちはこのお金の引き出しが、別の財産となって残っていないかどうかを調べるのがこの調査の目的です。相続人の皆さんの名前で預金になっているかどうか職務権限で銀行や証券会社に行き調べます。」「まさか、この家の中に金塊に替えてしまってあることはないですか。最近よく家庭に金塊を保管する人がいるので税務調査で発見することもあるのです。それで必ずお聞きして調べることにしているのです。」
 これが相続税調査の実態です。財産家の皆さんの現在のすべてが他人に見られると思って間違いありません。それも公権力を持つまだ30歳代くらいの若い調査官にです。それが実情です。

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親の相続対策は誰がするの?

vol.8

 「もし私が死んだ時の相続が心配なんです。」という親側から相談を持ちかけられるケースは、相続税が悩みの種というケースはあまり多くありません。それは、相続税が出てきてもそれに見合う預金を蓄えている人が多いからです。税金の心配ではなく、「争族」といわれるように、自分の財産をめぐって子供の争いが心配なケースです。もちろんどの親も大切な子どもたちです。そんなことは望んでいません。しかし、子供たち側に立つと、さまざまな背景があり、必ずしも兄弟姉妹間の関係が良好という場合ではないのが現実です。その子供たちにどのように分けていくのがベターな方法かについての心配です。この場合は親が対策を考えることが多いのでしょう。
 子供側からの心配はなんといっても相続税です。相続財産の多くが土地の場合、相続税を払うお金をどうすかという問題です。さらに、自分の会社の株式が主たる財産の場合も同じです。もちろん預金だけの場合であって、最悪納税資金は確保できる場合であっても、もっと少なくする方法はないかの心配は尽きません。
 親側、子供側それぞれの立場の中で税理士に相続の心配を持ちかけられます。しかし、実際に相続対策は親がする方法しかありません。両者一体となってすることはほとんど無く、親の立場で仕事をさせていただいております。子供には見えにくい分、やきもきさせていることも多いでしょうね。
 

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亡くなった人の人柄、趣味をじっくり聞かれます。

vol.9

 税務署が相続税の調査に来ると、最初に亡くなった人の人柄、趣味について聞いてきます。生前どんなことに力を注ぎ、どんな種類の財産を持っているのかを相続人に聞きながら想像するのです。また、どこに財産があるのかも聞き出します。どこにというのは、ペイオフの関係でいくつかの金融機関に預金する人がいます。市内、市外、県内、県外最近は海外を使う人もいるので相続人に聞くのは必須の条件です。
 当然、相続税申告書は隅から隅まで確認してきているので、どんな財産が申告されているかはすでに承知です。それ以上に、相続人から話を直接聞くことによって申告漏れを探しにきているのですからお間違えなく。
 家の中はジロジロ見て高価な物を探します。書画、骨董品はある程度の値打ち物かどうか、調査官たちは素人が多いのですが、作者作家の名前を聞いては後日調べているようです。
 一通りの亡くなった方の経歴を聞いた後、本格的に調査が始まります。調査官「家の貴重品はどこにしまってあるのですか。」、相続人「家の金庫です。」、調査官「どこにありますか。」、相続人「私の寝室ですから中のものを持ってきます。」、調査官「一緒に同行させていただいて見せていただけませんか。」、相続人「散らかっていますからお見せしたくありません。」、調査官「どうゆう状態で保管されているか見たいのです。」、相続人「どうしても嫌です。」というように任意の税務調査ですので断ることはできます。しかし、いい悪いと言っている間に押し切られて、「それではどうぞ。」というケースが多いのではないでしょうか。
 金庫は整理していたほうがいいですよ。






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父さんの金庫の中をじっくり確認してみましょう。

vol.10

 一家のご主人が亡くなると家の金庫は誰が管理するのでしょうか。多くは配偶者の奥さんが管理するようです。生前、ご主人自らだけが金庫を管理されていた場合、奥さんが金庫の管理を引き継がれても、今までの資料はそのままにして使っているケースが多いのではないでしょうか。
 そのまま金庫を未整理にしていると、万が一、税務署の調査官が「金庫を見せてください。」となってしまうと、未整理の資料がそのまま出てきたりします。
 未整理とは?どんな資料でしょうか。奥さんや子供さんやお孫さんの名前で積んでいる定期預金証書、ご主人が契約者で奥さんや子供さんを被保険者としているために今回のご主人の死亡では支払われない保険の契約書、奥さんや子供さんやお孫さんが契約者の郵便局の簡易保険、帯封のついた現金、はては金塊です。いったい誰のものなのでしょうか。
 調査官が来訪した時点で見る金庫は亡くなっ時と違い、数年たった後の金庫です。そのため、亡くなってから貯めたものだと言えなくもありません。しかし、銀行や証券会社、郵便局には証拠が残っていますから、調査官は過去の日付をさかのぼって追っかけて調べてきます。きっかけは金庫を見たときの心証なのでしょうか。勘ぐりなのでしょうか。
 金庫の調べは実地調査の最初のスタートですから相続税の確定申告前からじっくり確認しておきましょう。

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