Story of Tax Examination 税務調査物語 相続編

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数年前売った土地のお金、どこにいきました?4

vol.16

 調査官は来訪して開口一番「ご主人は数年前土地をお売りになりましたね。確定申告をされています。当時受け取られた数千万円の収入が、時間の経過後、どのような財産に変わって、どのような遺産として相続税申告されているかを確認させてください。」と言い始めました。
 当然のように金庫を確認し、過去の古い預金通帳を要求してます。しかし、多くの場合もう捨ててしまっている人が多いので、調査官は「銀行で直接確認させてもらってもいいですか。」と同意を求めているような言い方ですが、実は銀行に行くことを断言して帰るのです。
 早くて約1ヶ月後、再び来訪です。調査官「銀行で調べました。○月○日に奥さんの名前で定期預金500万円、○月×日子供さん3人の名前で500万円づつ定期預金がつくられています。この定期預金の筆跡やハンコはお父さんのものだと思われるのですが。今回の申告にはいれてありません。この定期預金について相続人の皆さんは当時からご存知でしたか。」と一気にたたみかけてきます。
 相続人「父が亡くなって初めて知りました。しかし、私たちの名前になっているので、私たちがすでにもらった財産と考えて申告財産には入れませんでした。それは悪いことだったのですか?」と反論するのですが。調査官「定期預金を作った時以来、筆跡から作成はお父さん、その後の管理もお父さん、奥さんや子供さんは亡くなられてからその存在を知った。これでは最初から贈与契約が成立していないじゃないですか。これは贈与ではありませんよ。お父さんが皆さんの名前を借りているだけで、実質はお父さんの財産じゃないですか。」、相続人「・・・・」
 結局、贈与ではないので贈与税をとられるのではなく、お父さんの遺産総額に加えられて相続税の追徴税額でした。
 これが数年前ではなくもっと前につくられた定期預金であっても、贈与ではないので贈与税の時効も関係ありません。100%財産計上漏れで押し切られてしまうのです。
 税務署とのトラブルは遺産の確定が一番難しい問題です。
 



 

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数年前売った土地のお金、どこにいきました?5

vol.17

 税務署には多くの個人情報が個人別に名寄せされています。制度的には支払調書として勤務先の会社からの提出が法定化・義務化されているものもありますが、水面下ではいろんな個人情報が個人別(税務署の言い方は納税者別)に収集されているものと思われます。特に所得金額が2,000万円を超える人は「財産及び債務の明細書」を提出しますので、なおさら正確な資料がそろってくるのです。
 数年前に売った土地のお金はどこに行きましたか?「そこまでなぜ知っているの?」は論外です。税務署が秘密諜報しているというよりも、正式な提出資料によって把握されている事実がはるかに多いということなのです。
 納税者番号制度はこれに拍車をかけます。電子化されてしまえば逃れるすべはありません。消えた年金の回復を理由に(口実に)着々と国民財産の把握制度は構築されています。
しかし、それはやむを得ない事実としてとらえて税務を考えましょう。
 

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贈与の原則

vol.18

 贈与は民法によっています。民法の贈与は諾成契約といって、一方が自分の財産をタダで相手に与える意思表示をして、相手がそれを受諾することで契約が成立します。与える側が「あげますよ。」と意思表示し、もらう側が「わかりました。いただきます。」と意思表示しなければ成立しません。書面でも口頭でも成立します。しかし、遺言とは違いますので、相手が知らないのに、一方的にあげますという意思表示だけで成立するものではありません。ここが難しいところです。
 「これからは子供の名前で定期預金をつくってやる事にしたよ。将来のためにね。」といって一生懸命預金をつくる人は多いのですが、一方の子供がこのことを全く知らないので、民法でいう贈与にはならないということです。「そんなの関係ないさ。子供のためにつくってやるだけさ。」将来相続税を納税することがない人はそれで大いに結構です。頑張ってつくりましょう。しかし、財産家の方々、そうはいきません。それは、税務署が見ると贈与になっていません何年経っても何十年経ってもそれは贈与が成り立ちません。時効もありません。「子供の名義を使ったあなたの財産」という税務署の認定になってしまうのです。
 民法のこの原則は、たとえそれが公正証書が作成されていようとも、そこに贈与に事実がないならば仮想行為、虚偽表示と認定されひっくり返されてしまいます。これは税務裁判での話です。贈与のむずかしさがここにあります。

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白色申告の専従者が預金を持っているのはおかしい!?

vol.19

 医師歯科医師に適用される措置法26条は業界では常識です。社会保険診療収入が5千万円以下の場合には概算経費が認めれられる特別な制度で、所得税の計算に使われるとても簡単な制度です。簡単に所得計算できますので、白色申告の方も多いと思います。特に高齢の先生方は「うちの医院は青色申告にしたほうがいいのだろうか、それともこのまま何もしないほうがいいのだろうか。」と長い間迷ってこられた先生方は多いのです。
 ご存じのように白色申告は家族に給料が払えません。専従者控除という控除の制度はあっても、給料ではありません。そのために、医院で儲かったお金は、全部先生ご自身のものです。奥さんのものはありません。
 妙な言い方ですよね。お二人で苦労して作ってこられた医院です。そこでの儲けから生活費がでてきます。その一部を奥さんの名前で預金したとしても、奥さんにすれば自然なことですよね。「私だって苦労してるんだから。私のものよ。」しかし、税務署はこれを認めません。「奥さん名義の預金は先生ものです。なぜって、奥さんはこれを預金するだけの収入が過去ありません。稼いでいない人は預金もないはずです。あるのは奥さんに名前を借りた先生の預金です。」この論争が最大の問題のなのです。

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所得税の申告をしていない人が相続税を申告すると

vol.20

 相続税は亡くなった人の亡くなった日の財産に対して課税されます。所得税の申告をしていない人であっても亡くなった日に財産があれば申告しなければなりません。
 サラリーマンの人で、今まで確定申告をしたことがなかった人が亡くなったことで生命保険金、死亡退職金、たとえば1億円もらったことで相続税の申告をしなければならなくなったケースはたまにあります。これは税務署にとってもわかりやすい申告内容ですから大きい問題は起こりません。税務調査というのはあまり聞かないです。
 しかし、事業をやっていても所得税の申告をしなかった人が亡くなった場合、たとえば預金が億単位にあるようなケースは、絶好の調査対象になります。税務署にとってお客様のようなものです。
 所得税を脱税しても、最終的に財産が残れば、相続税の網がかかってしまうことになるからです。税務署も所得税の申告がないと全くの未知数ですから、徹底的に長期の調査をするのは当然です。所得税の追徴と相続税の追徴がダブルで待っている最悪のパターンです。こんなことはないようにしましょうね。

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