Story of Tax Examination 税務調査物語 売上編

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税務署の人も緊張しているのです。

vol.6

 玄関に立つ税務調査官は緊張して立っています。新たな調査は新たな社長との面談だからです。税務署の人は、人と話すことが得意な人ばかりではありません。できれば税務署(彼らは税務署を会社と呼ぶようです。)内で静かに他人に邪魔されずにひたすら書面調査したいのです。しかし、税額ノルマはなくても調査件数ノルマはあるようです。毎年40人から50人の個性のとても強い社長さんたちと会うのですから、自分の言葉の言い方いかんによっては口論になるケースもかなりあると想像します。毎回口論したい人はいないのかもしれません。査察の部門でない限り、通常の税務署では「よーし、この会社で申告漏れを見つけるぞー」と意気込んで乗り込んでくる調査官が多いわけではありません。国家が、毎回けんか腰で調査に入るほどの強靭な性格の公務員を税務署だけに回しているとも思えません。定期的な通常調査というのは結構穏やかなのです。
 そんななか、調査第一日目、納税者はもちろんですが、調査官もこの社長はどんな人なのかなーと、不安な気持ちで緊張しているのです。お互いの緊張が和らぐのは、お昼にさしかかるくらいですね。

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帳簿は誰のためにつくるのでしょうか。

vol.7

 Aさんはいいます。「帳簿は税務署のためだけにつくります。」、Bさんはいいます。「帳簿は自社の経営のためにつくります。」実は両方とも極端です。実際はAさんに片寄った中間です。多くの経営者にとって、事細かに書いた帳簿を後で振り返る作業はほとんどありません。「あのときいくらの単価でお客様に出したかな。」というケースくらいでしょう。もっとも、帳簿の中身は見なくてもそれを集計した数字は過去データとして大切なデータですから、これは経営者として活用されているでしょう。数字を経営に活用できるのは帳簿あってのことです。そうなのですが、帳簿の記入の方法、帳簿保存年数(ほとんど7年です)を税法で定めている以上、税務署のために作成しているというのはむしろ自然なことなのでしょうね。
 戦後間もなく、納税する人もいなかった時代に、政府はどうしたら所得税や法人税を納税者が納税してくれるか検討しました。そこで考えられたのがアメとムチ政策です。帳簿をきちんと作る人には、青い申告用紙に記入させ、特典を与えるいわゆる青色申告の制度です。不備なら特典を剥奪するだけです。これを税務調査をドッキングさせたやり方が今日まで続いているのです。

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金庫をあけて見せてください。

vol.8

 穏やかな口調で「金庫の中をもせてもらえませんか」といいます。もちろん強制調査ではありませんの拒否できますのですが、いったい何が見たいのでしょうか。領収書を破り捨てた現金取引の現金、隠し取引の契約書、くず収入の隠し伝票、帳簿外を入金している預金通帳、そんなものはほとんどの調査であるわけがありません。またそんな調査は査察の仕事でしょう。
 通常調査の場合は現金の保管の仕方を確認しています。会社の社長の帳簿に対する考え方をチェックするとてもいい材料です。調査前日までの金庫にある現金残高が現金出納帳とあっているかどうかできちんとした会社かどうか判断しています。現金をきちんとしている会社は信頼がおける会社が多いからです。現金が何か所で保管されてたり、現金出納帳の記入がなかったり、現金出納帳の現金残高が実際残高とあっていない場合は、現金出納帳が信用できない帳簿となっています。調査官にとってやりがいがありそうに見えるのです。
 金庫はその人・その会社の大切なものが入っているので金庫をみるとそこの価値観がわかります。面白いものです。

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たった2日間の税務調査でなぜ3年分の会社のことがわかるのか。

vol.9

 税務調査の2日間のうち1日は売上漏れ、在庫漏れの調査です。あと1日で3年分の経費をすべて見ていきます。それは、総勘定元帳という帳簿にすべて記入してあるからです。弥生、勘定奉行、ミロク、TKC、PCA会計など会計ソフトは非常にたくさんの種類がありますがこのソフトは仕組みはほとんど共通です。世界各国同様です。中世から発達してきた簿記(帳簿記入のテクニック)は現在すべて機械化され簿記知識のない人でも入力できる仕様になっています。一度入力されるとソフト内で区分され勘定科目別に集計されています。それを年度単位で打ち出しして保管してあるものですから、たとえば交際接待費といえば1年間の交際費支出履歴がしっかり載っています。どこで飲食したかです。3年分の交際費履歴を確認には何分もかかりません。すべて記入してあります。
 総勘定元帳の作成を会計事務所は時間をかけ内容を精査し精緻に作らせていただいています。まるで、会社様の御依頼のもとに、税務署に見やすい資料を会計事務所が作成している。そんな風にお考えにならないでください。実はこれを作成しないと所得税、法人税、特に消費税で納税者が不利になることが本当に多いのです。帳簿作成を条件に特典を与えるというアメとムチの政策が伝統的な租税政策のためです。
 アメリカやヨーロッパの帳簿はこんな面倒なことにはなっていません。簡素化を民主党に期待したいところです。

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脱税する人の言い訳。

vol.10

 脱税事件の新聞テレビ報道をよく見かけます。「関係者の話によると」ではじまる暴露話です。関係者って誰なんだと思いますが最近は税務署が戒めのため検察庁に告発することが多くなっているようですね。
 脱税の経営者の言い訳NO.1は「将来のために資金を蓄えたかった。」「会社が好調のうちに資金を蓄えておきたかった」です。本税と罰金で脱税利益の80%以上の金額を徴収されてしまいます。そこで脱税は割に合わないと納税意識が生まれ、このことを報道することにでより未然に脱税を防止することにつなげていくわけです。
 手口として多いのが「つまみ申告」というやり方です。売上を全部申告しないでつまんで一部だけ申告するのです。さらに多いやり方は架空仕入れ(仕入や外注費の領収書を架空につくりお金を出金して隠すやり方)、架空人件費(パート、アルバイトの人数を増やし領収書を架空につくりお金を出金して隠すやり方)、架空経費(交際費、協賛金などの架空領収書でお金を隠すやり方)がオーソドックスです。そうやって貯めたお金がどこかにあるのです。おおよそは一般的に誰もが考えつきそうな内容ですよね。我々が考えつくのですから調査官もその上を行きます。
 「領収書があれば経費になるんだろう」と考える人がいます。お金を出していない領収書は誰が見ても不思議な領収書に見えます。2日間調査する調査官は、この領収書を時間をかけて縦から横から裏から見て触って匂いを嗅いでじっくり確認します。彼らの脱税を嗅ぎ分ける能力はさすがプロなのです。
 

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