Story of Tax Examination 税務調査物語 在庫編

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倉庫の隅には在庫漏れ商品が眠っている。

vol.11

 決算末日にある在庫の数はすべて在庫表に載せます。たとえそれが、もう売れないような商品であっても載せます。税法は、お金をかけて買ったものは、いつまでも買った金額で価値が残ると考えています。もし商品価値がすでになくなり買った金額より低くなってしまった場合には、おおよそその商品の金額を見積もって、買った金額との差額を評価損として経費に計上する、という面倒なやり方が必要になります。価値がなくなっていることを、決算書で税務署に意思表示しなければ経費にならないのです。在庫表から落としてしまうのはてっとり早く外からわかりにくく簡単です。しかし、税務調査で現物と在庫表との照らし合わせをやるものですから、簡単にわかってしまうことが多いのです。
 なぜ簡単にわかるかというと、ほとんどの会社は売れないような半端モンを倉庫の中心には保管しません。決まって倉庫の片隅です。隅だけじっくりみていくと在庫表から外れているように見える商品がよく見えるのです。皆さんもそんな目で見てください。在庫表から漏れている商品が「俺を見てくれ」といわんばかりに、倉庫の隅に並んでいることが結構多いです。
 在庫表に載っていない「もったいない商品」は実際に廃棄してしまことをお薦めします。
 

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皆さんのメモ書きは調査官にとってはうれしいメモ書き

vol.12

 在庫表の作成で単価の欄に鉛筆書きでメモ書きすることありますよね。プリンターで打ち出ししたものが違っていて、本当はこの単価になるとか、商品名が違っていて正しくはこの商品名とか、Aさんが調べたものの中にすでに売上げているけれどお客様から預かっているものがあるので数量を減らしたとか、エクセルで打ち出してもどうしても変更しなければならないものがありますね。このメモ、調査官にとっては調査のきっかけをもらえる、うれしいメモ書きなのです。なぜこれが書かれていたのかを紐解くことにより、これをきっかけに在庫漏れのうっかりミスを探そうとピンポイントを攻略してきます。強力なピンポイントですよ。
 メモをお書きになるときは、他人に見られてもいいメモでありますように。帳簿にお書きになるものは、すべて必ず、調査官に見られるものだと判断しながらお書きください。

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作業現場に散らばる解釈の違い。

vol.13

 税務調査の期間は前期までの分です。個人事業でいえば前年分、法人でいえば前期の事業年度分です。しかし、税務調査はその後にやってきます。約1年くらいたってから来ることになります。今の倉庫や工場の現況は扱い商品・製造商品が変わっているのにもかかわらず現場に行きます。なぜか、決算日と今と変わらないのは倉庫の隅にあるデッドストック(不良在庫)だけではありません。倉庫や工場のサイクルを実際の目で確認すると、段ボール・化粧箱のような直接の商品・製品ではない貯蔵品、半端モンに見えても加工次第で製品になるもの、未使用で買い貯めてある予備の機械部品・消耗品、スクラップ屋さんに回す金属材料クズ、販売促進用に買った商品残、など 社長さんが在庫ではないと判断されても、別の解釈の余地のあるものがあるかもしれません。
 どこまで在庫に入れているのか、会計事務所と一緒に作業現場で確認しましょう。

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商品の製造出荷サイクルで今期の調査も変わります。

vol.14

商品を納品するまでのサイクルは会社によってまちまちです。1日で納品する会社。1週間かかる会社。3カ月かかる会社などです。長いほど在庫の額が多くなっていくことにはなります。とりかかった材料費、つくる人の労務費、つくるための経費などどんどんかさんでいきます。
 たとえばソフトハウスのような物を扱わない、人間の能力だけの会社でも、毎日毎日人件費という在庫を積み上げていっていっていることになります。まして、材料の必要な製造業は多額な在庫になりますね。
 決算末日の在庫さがしはこのサイクルが長いほど先の売上げまで調べていきます。3カ月かかる会社は、3ヶ月先の売上分の在庫が、前期の決算日に漏れていないかを探します。3ヶ月先に売上が上がっているのに決算日に在庫がないほうが変ですよね。「そんな先の今期の売上まで調査するの?」「はいそうです。」前期末の在庫もれや売上もれをさがすのにそこまで見ます。考えてみれば当然ですよね。
 結構、税務署はその会社に合わせた自然の流れを見つけて調べます。そのために1時間以上も会社の特徴について、会社の商品製造出荷サイクルについて、入金サイクルについて聞き取りをするのです。 
 これもあの手この手の「決算日の攻防戦」の一つです。

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納税者と会計事務所の重要なコンセンサス

vol.15

会社の従業員の人たちが、1日の間でどんな作業をしているか、商品がどのように搬入・保管・出荷されているのか、製品がどのようにつくられているか、について税務調査の立ち会いをするとよくわかってきます。ほとんど現場に入ることのない会計事務所員にとって、現場は縁遠い所です。
 「そんな不思議なことがあるの?」といわれそうですが現場を見なくても、渡していただいた在庫表などの資料だけで決算は組めます。会社さんで棚卸が正確に行われていること大前提に決算を組むのです。税務署がとりかかる「決算日の攻防戦」はむしろ会社さんから提出された在庫表と税務署との攻防戦です。そのため、攻防戦の結果は会計事務所は静観しているのが現実です。
 決算を組み立てる際に、細かい在庫表から在庫漏れをさがすために一つ一つの確認を行い、決算組立時間を増やしてしまうことは、決算料がかさんでしまい経済的ではないという理由と在庫も漏れは多少仕方ないという会社さんとの意向で多くの事務所はやっていないのが現実です。ここに申告漏れがいったいだれの責任なのかという大問題が発生する余地があります。
 その問題が起きないように、納税者の方と会計事務所とは協議していきたいものです。十分なコンセンサスを取っていきたいと考えています。
 
 

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