Story of Tax Examination 税務調査物語 相続編

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ハンコを変えて定期預金をつくるのは贈与?

vol.21

 子供名義の定期預金をつくります。 
 親「ハンコを親のものと変えて新しくすれば、贈与は成立しますか?」
 税理士「いいえ、ハンコを違えても贈与の立証はできません。そもそも贈与契約は、子供がその定期預金をもらった意思表示をしなければならないからです。意思表示とはもらった事実を知っていることです。」
 親「それであれば、子供にあげるよとはっきり言ってしまいましょう。知っていればそれでいいのでしょう?」
 税理士「いいえ、それでもまだ完全に贈与は成立したと言い切れないのです。」
 親「えっ!どうしてですか。」
 税理士「子供がそのお金を自由に使えないからです。普通、贈与はもらったものは自分勝手にできます。勝手にできないのであれば実質的にもらっていないことといっしょでしょう。」
 親「自由にさせたら、子供は使ってきってしまうじゃないですか。それはだめですよ。」
 税理士「それであれば最初から子供の自由にさせないものということになります。贈与は最初からないことになるでしょうね。」
 税理士「子供名義の定期預金をつくり、その利息は元金に組み入れないで、親の口座に入金している場合も同じで、子供が管理していないことになりますね。」
 親「こりゃあ簡単にできないなあ。」

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生活費に贈与税はかからない?

vol.22

 一家を支える世帯主に高額の収入があり、奥さんや子供さんにも普通の給料収入があるケースです。家族で会社をやっていて、跡継ぎの息子が会社に入ってくれて同居してくれるているようなケース。またはお医者さんが青色申告にして奥さんに専従者給与を払っているケースです。この場合生活費はどなたが負担しますか?
 一家の世帯主が生活費を全部負担し、奥さんや子供さん方が一切生活費を負担しないで、毎月の給与をすべて貯金し続けた場合どうなるでしょうか。家族月額20万円生活費がかかるとしたら、年間240万円、10年間で2,400万円の財産が家長の財産から消えます。奥さん方の貯金は2,400万円そっくり膨らみます。
 万が一世帯主が亡くなって相続税の申告になった時、世帯の預金は奥さんが不自然にたくさんあることになります。これをどう扱うでしょうか。
 これについての税務調査はどうなるのでしょうか。実は、結構認められていないケースが多いのです。なぜか。「現在の民法は家長制度ではなく、構成員の家族は男女かかわらず平等という考え方から、生活費はそれぞれが収入に見合う分を負担すべきでるというのです。世帯主、特に収入が一番高い人だけが100%負担することは、他に特別の理由がない場合が多く、実態は相続税の租税回避である」というのです。もちろんさまざまな実態がありますからすべてこうなるわけではありませんが、これは基本の考え方のようです。
 どうなるのか。家族全員の収入の割合で、家族全員の預金を按分して、世帯主が本来持つべき額を計算して遺産の総額に加えるのです。信じられますか。しかし、これが税務調査の実態のようです。生活費に贈与税がかからないことを中途半端に利用するとこのようなケースにもなりかねません。十分専門家と話し合いましょう。
 これに異議を申し立てて裁判になり、その後判例となったケースはあまり見当たらないので、巷に知られていないことなのです。   

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生命保険料は生活費と考えないでください。

vol.23

 生活費には贈与税はかかりません。一家の主である世帯主のお父さんがより多く生活費を払うことは現実的です。しかし、お父さんの預金口座からお父さんの生命保険料が引き落とされるのは当然ですが、奥さんや子供さんの生命保険料まで引き落とされるとその分には問題が残ります。
 お父さんに万が一の相続があった場合、お父さんの預金口座から引き落とされている生命保険料のうち、自分にかけているもの(お父さんが亡くなった時に支払われる保険)は生命保険の一時金で保険会社から支払われます。しかし、家族にかけているもの(家族が亡くなった時に支払われる保険)はそのまま継続していいます。
 お父さんに死亡で保険金が払われていないのですから相続税の申告で見落としがちなのですが、亡くなった日まで保険会社に毎月払い続けてきたこの保険は、生命保険会社へ解約手続きをすると戻ってくる分があります。この戻り分はお父さんの遺産に含めなければならないのです。
 お父さんが払った生命保険料は、普通の人から見れば生活費の一部でお父さんが支払ってくれたように思えます。しかし、この分はもし満期をむかえれば贈与税の問題がおこりえますし、相続をむかえれば相続税の問題が起こります。
 生命保険料は食費や娯楽費のように消えてなくなるものではありません。財産として残ることが多いので要注意です。

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教育費に贈与税はかからないというけれど。

vol.24

教育費に贈与税はかかりません。親は大変ですよね。子供の塾、私立高校、予備校、大学、さらには仕送り、さらには留学となったら、親のすねはボロボロ。これらの費用を親が負担するのが当然というより一般的でしょうね。
もし、この費用を親ではなく、一緒に住んでいる、世帯主の、それも一番財産の多いおじいちゃんが支払ったらどうなるのでしょうか。おじいちゃんだって一家の世帯主として家族の扶養義務があります。おじいちゃんが「よしわかった、その学費わしが出そう。」となれば、それはそれでいいのでしょうね。結果的にはおじいちゃんの財産が減ることになります。もちろん結果的にですよ。
 税務調査で、その贈与の事実をどう立証するかでもめることがあります。税務署にとやかく言われる時期は、世帯主のおじいちゃんが亡くなって、相続税の税務調査になった場合です。この時に今までの贈与としてやってきたことに真価が問われるからです。
 たとえば、学費を支払う時期が3月頃なのに、その数ヵ月後に、おじいちゃんの預金口座から現金でその額と似たような概算額を引き下ろしているようなケース、これは学費ですと立証しきないので、調査官は「このお金は学費の贈与ではなく、どこかに隠し持っているのではないですか。」と疑ってくることがあるのです。
 おじいちゃんが「わしがだそう」というなら、支払期限の3月に学費そのものズバリの金額で支払ってくれるか、またはそれに似た出金が3月にあって「これで支払いなさい。」と言って手渡してくれるのが普通でしょう。時期が数か月ズレルとあればその立証をしないとなかなか認めないことがあります。寝たきりの意思表示できないおじいちゃんの預金口座を、長男が勝手に出し入れする場合もあるからです。
 本当に教育資金を贈与するならば、その領収書を必ず保存しておきましょう。証拠があるにこしたことはありませんよ。

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子供の名前の預金は誰が管理していますか。

vol.25

 子供のハンコを新たにつくり、子供の名前で定期預金を新たにつくる。ハンコは金庫に入れておき、「私に万が一のことがあったら、このハンコは子供にやってくれ。」と言い残し亡くなってしまったケースです。
 相続した長男は、税務調査が来たら「これは私のものです。当時親からもらったものです。」と言おうと心に決めて、相続税申告の遺産には入れませんでした。確かに、親が管理していたという証拠は見つかそうにありません。一方、自分がもらっていたという証拠は、唯一ハンコがいつも親が使用していたハンコと違うことです。そのハンコは現在自分が持っています。大丈夫と思っていました。
 この長男は嫁が姑である母とそりが合わないため、近所のマンションに住んでいました。そのため、自分がつくる定期預金はすべて自分独自のハンコを使っておりまして、お父さんが子供用として使っていたハンコはお父さんの所の金庫にあったためもちろん使用していませんでした。
 調査官「なぜ、贈与してもらった定期預金と自分の給料からの定期預金のハンコが違うのですか。相続人のあなたは贈与に事実を知っていても、実質的に管理していないのではないですか。この定期預金は自由にならなかったのではないですか。自分で自由に解約して使えないならば、実質的に管理していないことになるので贈与は成立しませんよ。」
 後日、調査官は「もう一度銀行で調べました。」「贈与されているという定期預金の一部が平成○○年に1本解約されています。何に使ったのでしょうね。」、相続人「きっと父親名義のこの家の屋根の塗装に使ったのでしょう。」、調査官「そうですか、お父さんは自分の預金のつもりで、あなたの名前になっている定期預金の一部を勝手に解約して自分のために使ったのですね。それでは、贈与は成立していないことになりますね。」
 調査官「この預金は亡くなられたお父さんの定期預金ということになりますね。修正申告してください。」、相続人「うそはつけなかったですよ。」の一言でした。

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